さゆぽんの防犯対策インタビュー。
5回目の今回は、杉並区長の田中良氏をお訪ねし、杉並区における「安全・安心を確保する」まちづくりについてお話を伺いました。

昭和35年11月4日 杉並区に生まれる
〈学歴〉
杉並区立桃井第五小学校卒業
私立獨協中学校卒業
私立獨協高校卒業
明治大学政治経済学部卒業
〈職歴〉
昭和59年 株式会社テレビ東京
平成3年4月~平成5年6月 杉並区議会議員
平成5年6月~平成22年6月 東京都議会議員(連続5期)
平成21年8月~平成22年6月 東京都議会議長
平成22年7月 杉並区長(2期目)
〈趣味〉将棋
〈座右の銘〉
澄心得妙観(ちょうしんみょうかんをえる)
澄んだ心であれば、良い考えが得られる。
次世代に継承するまちづくり
その責任を果たす行政を目指して

本日はお忙しい中をお時間いただきありがとうございます。私ごとですが、杉並区に長年在住し、区民として今回お話を聞かせていただける機会をいただき、嬉しく思っています。区長が、杉並区の行政のトップとして現在力を注いでいらっしゃることを端的に教えていただけますか。
大きく3 つに集約されます。まず一つは、「安全・安心」。治安の維持と首都直下地震に備える防災・減災。二つ目は「少子高齢化」。この流れにどう対応し乗り越えていくか。そして三つ目は「次世代に継承するまちづくり」。まちづくりは一朝一夕に出来るものではありません。中長期的な視点を持って次の世代に引き継ぐ必要があります。この三本柱で取り組んでいます。
「防災・減災」については、すべきことが見やすい世界ですよね。建物の耐震性や不燃化とか、避難路確保のための道路等の基盤整備。火災への備え。特に木造密集地域に対して何をする必要があるかといった具合に。
「治安維持」については犯罪も国際化する中でどのように未然に抑止することが出来るのか、発生してしまった場合いかに早く検挙するのか、防犯カメラはその代表例ですがそうした治安の維持・向上に努める必要があると考えます。時代は変わったとはいえ、政治の原点はやはり「治安維持」だと思います。例えば、治安の悪いところにお金持ちは住もうとしない。お金持ちが住もうとしない街は弱者を救う力が弱くなります。弱者を救済するのは政治の大事なポイントですが、救済するためには弱者ではない人たちが居てくれないと助けられません。弱者救済をやるなら富裕層に対する政策も大切。バランスが大事だと思うんですよね。ここまでは比較的「何をすればいいか」がわかりやすいものですが、「少子高齢化対策」は非常に大変です。手間・暇(時間)・お金、そのすべてがかかる。現在、区内の高齢者の中で100 歳以上の方は370人くらいいらっしゃいます。
そんなにいらっしゃるんですね!
いかに長寿社会になっているかがわかると思いますが、健康で長生きする人ばかりではありませんから、さまざまな問題が起きてくる。それに加えて核家族化も進んでいますので、単身高齢者とか老々世帯も加速度的に増えています。どういう行政サービスが必要になっているのか。現状必要なサービスが供給できているのか。供給体制は作られているのか。
少子化についても、47 都道府県で一番出生率が低いのが東京です。東京には地方から若者が流入していて、23区の人口はどんどん膨張している。でも出生率が全国最低というこの矛盾を改善することを本気でやらないと人口減少、少子化これが加速化する訳ですよね。それが巡り巡って何になるかというと、国力が衰退していくスピードが速まるということです。だから国家的課題として、せめて保育園を整備して女性が仕事と出産、子育てが両立出来るような社会的環境を早く作ろうという背景があって、保育園に注目が集まっている訳です。そこを理解していかないといけない。近所に作られたらうるさいと、子どものためになぜ公園を潰すのかとかね…いろんな意見がありますが、譲り合っていかなければ、これは国家的課題なのです。自分の子どもや孫の時代に日本にどうあって欲しいですか。そこから考えて譲り合って欲しい、というのが、私どもの言い分ですね。
そして「まちづくり」。都心の中央区、千代田区、港区のまちづくりは、大手資本と国、東京都がどんどん乗り出して、経済合理性が成り立つ範囲で決断出来る「主体」がテーブルについて事を進められます。
杉並区はそうした進め方はできません。大小の権利者が錯綜しているような土地においては、その調整が非常に難しいですね。単なる経済合理性では話がつかず、まちづくりはまとまらない。そういう難しさがあります。だからと言って、何もやらなければ永遠に物事は動きませんから、そこにチャレンジしていくことが必要で、自治体は責任をもってやる決意を固めて、住民の共有する地域のまちづくり目標をみんなで作り上げることが必要だし、それをどのような事業手法で実現していけばいいのか追求して一生懸命やる。日の目をみるのは恐らく死んだ後だと思うのですが、それでも自分たちの世代としての責任を果たしていこうっていう「気持ち」をもってやらないといけない。そう思っています。